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禅語紹介⑥/平常心是道

曹洞宗禅僧 月舟 書

久しぶりの禅語紹介です。今回ご紹介する禅語は非常に有名な禅語

「平常心是道(びょうじょうしんぜどう又はへいじょうしんこれどう)」です。

広辞苑で「平常心」と調べると普段通りで平静である心」とあります。

ですからそのまま読めば「どんな状態でも冷静で平穏な心で日常を過ごすことが大事なんだ」と読めます。

しかし、禅宗のいうところの「平常心」は若干ニュアンスが変わってまります。この平常心とは禅の真髄にも触れ、このコロナ禍の時代である今だからこそ心がけたい、胸に刻みたい禅語であります。

著名な禅僧の多くがが掛け軸などの書にこの言葉を記しております。それほど、禅僧にとって意義のある言葉なのでしょう。

「平常心是道」

この言葉の由来は中国南栄時代の無門慧開(1183‐1260)によって編まれた仏教書、または禅書・公案集と呼ばれる著作にある故事からなる公案です。

登場人物は中国の唐時代の禅僧「趙州(778年‐897)」禅師とその師にあたる「南泉(748‐835)」禅師との問答が元になっています。

また、南泉禅師はその師の馬祖道一(709‐788)禅師が「平常心」を説かれた語録があります。今回は有名禅問答である趙州と南泉禅師の問答を参考にいたします。

「無門関」第19則

趙州和尚が師の南泉和尚に「如何是道(道とはどんなものでしょう)?」と尋ねた。

その答えが「平常心是道(ふだんの心、そのものが道である)」と答えた。

※ここで言うところの「道」とは仏道である。

趙州「その心とはどのようにしてつかむことができるのでしょうか」

南泉「つかもうとすれども、つかむことはできない。」

趙州「つかむことができなければそれは道ではないのでは」

南泉「道は考えて理解できない。しかし、わからないといってしまうこともできない。考えて分かるのであればそれは妄想である。わからないものであればまったく意味のない事になってしまう。」

南泉「理解できる理解できないという分別を離れると自ずからそこに道が現れる。まるで澄み切った秋空の如く、分別を入れる余地はまったくない。」

趙州「なるほど」

趙州はその答えを聞いて悟ったという・・・。

皆さん、理解できましたか(笑)

勿論この問答で悟りを得た趙州禅師が希代の高僧でありますから、凡夫(一般人)の我々が理解できないのは至極当然であります。

簡易な言葉の羅列であるこの禅語が実に奥深い言葉であります。南泉禅師は簡潔に悟りの境地(悟りといっても様々である事は留意しておく)を述べているわけですが、仏教の基礎知識やある程度の実践を伴い、初めて身心共に納得できるのが禅語には多分にあります。その代表格がこの「平等心是道」になります。

特に今回の禅問答で理解しなければならないのが「分別」の意味でしょう。

分別とは人間にある相対性的で両極端の思考を嫌う為にある相反する見方です。

例えば「美しい」があれば即ち「汚い」があり、「幸せ」があれば「不幸」があります。更にいうと「金持ち」⇔「貧乏」「賢い」⇔「愚鈍」「好き」⇔「嫌い」の必ず人間は違いを明らかにします。更にいうと「悟り」⇔「迷い」のように悟る悟らないも分別として捉えます。

即ち「分別を離れる」ということはこの相対性で図る事(造作)をやめる事。

また、馬祖禅師も「造作無く是非無く、取捨(選択する)無く断常(死後の断絶)無く、凡聖(凡人と聖人)無しと説かれています。

造作無くというは、平常心を持とうとか平常心になろうと心かけるような作りごとをしないと言うことです。

迷いも悟りもない。その造作しない(分別しない)ありのままの心こそそのまま道であり仏であります。

そこに自己に「気づき」初めて「仏性現起(全てのものに仏が宿る)」がある事を自覚し、ありのままの自己こそが「平常心」であり「仏」そのものであるいうことです。

「気づく」ことが大事であり、それがなければ「仏」を自覚する事もなく、分別して平常心とはかけ離れた一生を歩むことになります。

すべてのものに「仏」がある事に気づけば世界は一層素晴らしいものになると思います。

「平常心是道」。簡易な言葉の真髄こそ正に「禅」そのものであるし、全ての禅語は基本的にはこの考え方を元に見ると理解しやすいかもしれませんね。

今回は少し難しかったかもしれませんが、この禅のニュアンスを伝えるのはなかなか高度であります。

私のような稚拙な文章しか書けないものよりも素晴らしい書籍が沢山あります。

藤田一照老師、魚川裕司氏、飲茶氏、佐々木閑先生。ブログでは「仏教のアレ編集部」「臨済宗大本山円覚寺」など非常に勉強になりますし、今回の平常心も引用させていただいております。

住職 永島 匡宏 合掌

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