応量器

青岸寺開基・要津守三和尚の応量器(江戸時代)

応量器を皆さんご存知でしょうか。応量器とは、曹洞宗の僧侶が食事をする際に、使用する器です。何種類かの器が大小と様々あり、一番大きい器(頭鉢)に重なるようになっています。シンプルにして、尚且つ収納に優れています。

一説によると、ロシアのマトリョーシカも応量器を参考にしたといわれています。

日常の生活に無駄がない禅宗の修行において、究めて合理的な器だといえます。

「応量器」とは曹洞宗独自の言い方で、それぞれの宗派で名称も変化いたします。

応量器の中でも一番大きい器を「頭鉢(づはつ)」といい、宗門では、お釈迦様の頭だと思い、大切に扱うようにと指導されます。応量器の中でも特に扱いを慎重にするもので、器に直接口をつけてはいけない、粥や飯以外はいれてはいけないなどの決まり事が多いのも特徴です。そして頭鉢を頂くときは、匙を使いいただきますので、器がすくいやすいようになっているのも特徴です。

他の器もそれぞれ役割が決まっています。

曹洞宗では本山に修行に行くことを「安居(あんご)」といいますが、安居して最初に徹底的に指導されるのが、応量器の扱いと食事作法になります。

すべての作法に理にかなった意味があり、一つ間違えるだけでも古参和尚(先輩)から注意を受けます。その為初期の食事には3時間かかることもありました。

基本的なルール

一、必ず両手にて応量器を扱う。

二、食事中は話は勿論、音を極力立ててはいけない。

三、坐禅の形で袈裟をかけていただく。

四、手順として約100近い決まりがある。一つとして間違えてはいけない。

五、背筋を伸ばし、肘を水平に保ち、最小限の動きをする。

等、一般の方が聞いたら息がつまる食事になると思います。フランス料理などルールが多いですが、それに比べても非常に決まり事が多いのが特徴です。

大小様々な器がある。

お釈迦様の時代からある応量器(もちろん呼称は違いがあります。)道元禅師が中国から帰国され、そのまま宗門に取り入れ、とりわけ食事作法を重視いたしました。

頭鉢(ずはつ)を両手の三指でかかげて持つ

食事は生きるものが必ずしなければなりません。食事をいただくということは、誰かの労力と何かしらの命をいただいている事になります。

道元禅師は当たり前の事を当たり前とせず、応量器を用い、徹底して作法を大切にする事で、食をいただく事を、命の根幹として仏道の一つとしたのです。

応量器と禅庭

現代、食育などの言葉がもてはやされています。「いただきます」を言わせない学校もあるそうです。

日本人の心とはなにか。食事で人を育てるとはなにか。

便利な時代だからこそ、食事のあり方が大切になっていきます。

住職 永島 匡宏 合掌

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