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住職悩み相談室$2474

皆さんごきげんよう。

日頃より青岸寺内茶寮にて拝観者の方がサイフォンコーヒーを注文していただくと、私がカウンターにてコーヒーを淹れさせていただいているのですが、時々悩みを相談されることがあります。

その都度、私なりに仏教や禅での考え方を通してお話しをさせていただいております。仏教の知識はそれなりに勉強して理解してきても、実際の生活において、どれだけ仏教や禅が実用性を伴うのかが最近の課題でもあります。

今回はその悩み相談の一つをご紹介いたします。

※ちなみに内容は本人のプライバシーもあるので大筋は一緒ですが、内容は変えております。

A子さん「住職さん。聞いてもらえますか?」

住職「どうしましたか?私でよければお聞きいたします。」

A子さん「私には今年77歳になる父がいるのですが、先日癌を発病いたしまして。」

住職「それはそれは・・お気の毒に」

A子さん「はい。それは年齢が年齢ですので、娘としては覚悟もしていたんです。」

住職「はい・・」

A子さん「ただ、父親自身が「死」を意識したことで終活ではないのですが、毎日自身の死について語ってきたりして、正直悪い事ではないのですが、心に引っかかるものがあってしんどいんです。私自身、話を聞いてあげなくては、と思ったりしてしまい、罪悪感もあります。どうしたらよいのでしょうか?」

住職「なるほど・・・」

住職「まず、初めにA子さんとお父さんとの親子関係を私自身、知らないので、その点を加味せずに、私なりの考え方をお話しいたしますね。」

住職「仏教では人間は例外なく「自己中心」だと考えます。自己とはまさしく「私」自身ですね。中心とは私を中心に世界が形成され存在している状態のことをいいます。これは半分当たっていて、半分は外れています。当たっているのは、人間というのは五感(視・聴・嗅・味・触)で得た情報を元に脳みそが判断して現実としてその「私」が世界の創造主としてストーリーを作りだしております。」

住職「半分違うというのは世界は個人と離れた「諸行無常」「諸法無我」であるという真理です。これは世界は「私」とは関係のない所で回っていて、個人一人がいようがいまいが変わらずに人間の営みは続いていきます。

住職「この二つの真理と現実が合致しない為、多くの方が悩み苦しみます。世界は「自己中心」の集合体でなりたっている仮想的な現実といえます。

住職「さて、今回の悩みでは二つの解決策があると思います。」

A子さん「なんでしょう?」

住職「一つは環境を変えてしまう。簡単な話、父親から距離をおくということです。冷たいようですが、悩みから距離をおくことが眼前の苦悩から離れることになります。お坊さんも出家するのは煩悩の誘惑から離れる為にありますし。」

住職「しかし、優しい$00C3子さんにはこれは難しいでしょう。実行したとしても罪悪感でいっぱいになり後悔するのは目に見えます。」

A子さん「たしかに・・」

住職「もう一つが「自己中心」である自分を見つめ、根本的な主観を変えてしまうことでしょう。人は日々の生活でのストレスが積み重なると精神病を患ってしまったり、ある日感情が爆発してしまったりします。」

住職「大切なのは「私」というのがずっと半永久的に同じ生き物ではなく、毎秒毎秒、新しく生まれ変わっている事実に気づくことでしょう。お坊さんはその為に坐禅をしたり仏行をいたします。ただ、一般の方はなかなか難しいですよね。ですから私は一日に数分でも良いので非日常的習慣をお勧めしております。」

A子さん「非日常的習慣?」

住職「そうです。現在の習慣から少し変化をいれてあげる。例えばサウナ、坐禅など瞑想、ヨガ、筋トレ、散歩、音楽を聴くなども良いでしょう。勿論、坐禅を一番に推奨はいたしますが。」

住職「更に、そこから自分のルールを作って下さい。」

A子さん「ルールですか?」

住職「そうです。例えば、すぐ怒らないとか、自分ルールを設けてあげて下さい。それがあなたのお守りになるはずです。お坊さんの場合はそれが戒律になります」

住職「自分を変える(本来はそのままの貴方で良いのであるが)必要性がある場合は環境を変え、言動を変え、思考を変えていくという手順で行うと良いです。ですが、A子さんも含めすべての生き物は瞬間瞬間に生まれ変わっています。そこに気づきさえできれば(もしくは理解しておけば)問題はすこし和らぐかもしれません。」

A子さん「なるほど。それは全然なかった視点でした。有難うございました。」

住職「ありがとうございました。」

住職 慧嶽 匡宏 合掌

※仏教用語を極力使わないようにしております。そのため、若干ニュアンスが異なります。ご了承下さい。

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